これまでインターネットの誕生から現在に至る歴史を俯瞰したことがありませんでした。「軍事利用のためのARPANETがインターネットの始まり」という教科書的な説明以外は、詳しく理解していませんでした。インターネット(の上で提供されるサービス)で生計を立てている一人として、この本を読んでおく必要があると感じ手に取りました。

本書の主題とは少し離れるかもしれませんが、最初に私の目を引いたのは、日本のFTTH(Fiber To The Home)普及率が8割以上と他国と比較して非常に高い水準にあり、コロナ禍における上り回線の需要を支えたという事実でした。

TCP/IPが急速に広まったきっかけについての記述も興味深かったです。ベル研究所が開発・公開していたUNIXをベースに作られた4.2BSDがTCP/IPを導入したことで、世界中の大学に普及したとのこと。UNIXのライセンス料の高さがLinux開発の契機ではなかったかと一瞬思いましたが、当時はAT&Tが民営化される前であり、教育機関向けには比較的安価なライセンス料だったようです。

海底ケーブルに関する話題は私にとって全く新しい知識でした。北極海の氷が溶けることが海底ケーブル敷設に繋がるという視点は、これまで考えたこともありませんでした。

第6章については、もう少し詳細な内容が読めるとより良かったと思います。1983年に書かれた『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の冒頭では日本企業の強さについて言及されていましたが、なぜ現在では後れを取る結果になったのか、より深く知りたいと感じました。

本書で繰り返し言及される「周回遅れの先頭ランナー」というキーワードは印象的でした。例えば国産クラウドがそのような存在になり得るのか非常に気になっています(個人的には強く応援したいと思っています)。

一見すると本筋から外れているように思える話題もありましたが、それらがむしろ私にとっては興味深い部分であり、読んでいて楽しい体験でした。