マウスの実験結果が必ずしも人間に適用できるわけではないということは直感的に理解できますが、人種(遺伝子)や環境(エピジェネティクス)によっても結果が異なることをご存知でしょうか。私はこの事実を知りませんでした。

欧米で確立された健康法は東アジア人にも同様に効果があると思い込んでいました。実践はしていなかったものの、地中海式ダイエットは私たち日本人にも有益だろうと考えていたのです。
しかし実際には、私たち東アジア人は(自然選択を通じて)炭水化物中心の食文化に適応した体質を獲得しているようです。それはインスリンの分泌量、胃酸の強さ、胃の構造など様々な面に表れています。
信頼性の高い論文だからといって鵜呑みにするのではなく、自分の生活に取り入れる前に「私たち東アジア人にとっても」信頼できるデータなのかを慎重に検証する必要があるでしょう。

本書で特に興味深かったのは、実験対象として日系人を活用している点です。ある疾患のかかりやすさが遺伝によるものなのか、あるいは食生活や運動習慣(またはそれらに起因するエピジェネティクス)によるものなのかを判断するために、日本人と欧米人、そして欧米の生活様式を取り入れている日系人を比較しているのです。
「糖尿病の原因=砂糖」「高血圧の原因=塩」といった単純な図式に飛びつくのではなく、そのメカニズムを理解することが重要だと学びました。必ずしも砂糖や塩を減らせば良いというわけではなく、人間の身体はそれほど単純にはできていないのです。

自分の生活に取り入れられそうな知見としては、以下のようなものが挙げられます:

  • 青魚の摂取頻度を増やす(糖尿病、動脈硬化の予防に)
  • 大豆製品を積極的に食べる(糖尿病、骨粗鬆症、脳梗塞の予防に)
  • カリウムの摂取量を増やす(高血圧対策として)
  • 飲酒量と頻度を減らす(高血圧、がんのリスク低減のため)
  • 定期的に体を動かす(大腸がん予防、内臓脂肪蓄積による糖尿病予防のため)

なお、本書を読んで最初に驚いたのは、日本人は筋トレで大きくできる白筋の割合が少ないため、いくら鍛えても基礎代謝があまり上がらないという事実でした。