欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」

『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(奥田 昌子) 製品詳細 講談社日本人には、日本人のための病気予防法がある!同じ人間でも外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がなく、むしろ逆効果ということさえあるのです。見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための方法を徹底解説! 日本人には、日本人のための病気予防法がある! 同じ人間であっても、外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。 そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。 欧米人と同じ………https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194958 マウスの実験結果が必ずしも人間に適用できるわけではないということは直感的に理解できますが、人種(遺伝子)や環境(エピジェネティクス)によっても結果が異なることをご存知でしょうか。私はこの事実を知りませんでした。 欧米で確立された健康法は東アジア人にも同様に効果があると思い込んでいました。実践はしていなかったものの、地中海式ダイエットは私たち日本人にも有益だろうと考えていたのです。 しかし実際には、私たち東アジア人は(自然選択を通じて)炭水化物中心の食文化に適応した体質を獲得しているようです。それはインスリンの分泌量、胃酸の強さ、胃の構造など様々な面に表れています。 信頼性の高い論文だからといって鵜呑みにするのではなく、自分の生活に取り入れる前に「私たち東アジア人にとっても」信頼できるデータなのかを慎重に検証する必要があるでしょう。 本書で特に興味深かったのは、実験対象として日系人を活用している点です。ある疾患のかかりやすさが遺伝によるものなのか、あるいは食生活や運動習慣(またはそれらに起因するエピジェネティクス)によるものなのかを判断するために、日本人と欧米人、そして欧米の生活様式を取り入れている日系人を比較しているのです。 「糖尿病の原因=砂糖」「高血圧の原因=塩」といった単純な図式に飛びつくのではなく、そのメカニズムを理解することが重要だと学びました。必ずしも砂糖や塩を減らせば良いというわけではなく、人間の身体はそれほど単純にはできていないのです。 自分の生活に取り入れられそうな知見としては、以下のようなものが挙げられます: 青魚の摂取頻度を増やす(糖尿病、動脈硬化の予防に) 大豆製品を積極的に食べる(糖尿病、骨粗鬆症、脳梗塞の予防に) カリウムの摂取量を増やす(高血圧対策として) 飲酒量と頻度を減らす(高血圧、がんのリスク低減のため) 定期的に体を動かす(大腸がん予防、内臓脂肪蓄積による糖尿病予防のため) なお、本書を読んで最初に驚いたのは、日本人は筋トレで大きくできる白筋の割合が少ないため、いくら鍛えても基礎代謝があまり上がらないという事実でした。

3月 2, 2025 · 1 分 · 44smkn

能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ

『能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ』(安藤 寿康) 製品詳細 講談社大谷翔平や藤井聡太のような、同じ人間とは思えない卓越した能力は、どうしたら得られるのだろうか。生まれつき決まっているのか。それとも努力や環境しだいなのか。 人類がいまだに答えを出せずにいるこの問題は、「遺伝」につきまとうタブーや偏見が邪魔をして、長い間、正面から議論されなかった。「遺伝と能力」という問題は、パンドラの箱に深くしまわれたままだった。 しかし、双生児の比較から能力と遺伝の関係をあぶりだす行動遺伝学は、唯一、この問題の研究を続けてきた。そして近年、発達著しいゲノムサイエンスによって個人の遺伝的素質がすべて暴かれるようになり、研究は一気に加速した。その数々の成果は、これまで誤解だらけ………https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000378842 私はかつて、性格をはじめとする心の働きは完全に後天的なものだと考えていました。 しかし、行動遺伝学の最新の研究成果によれば、パーソナリティの遺伝率は40%とされています。これは「特定の社会における表現型の全分散のうち、40%は遺伝子型の分散で説明できる」ということです。 パーソナリティは多因子遺伝であり、複数の遺伝子の相互作用によって決定されるもので、単純に親から40%受け継がれるという意味ではありません(エピジェネティクスや突然変異も関与します)。 遺伝によってすべてが決まるわけではなく、パーソナリティの例で言えば、残りの60%は環境要因ということになります。ただし、遺伝子という外生変数が関与しない行動はなく、環境要因にも遺伝が間接的に影響を与えることが多くあります。これは「遺伝と環境の交互作用」と呼ばれています。 いわゆる一流/超一流の能力の発現については、身体的形質、心理的形質、環境的要因が必要であると理解できます。 例えば短距離走者の場合、速筋の割合の多さや骨格のバランス、ストライドの長さといった身体的形質、粘り強さやセルフコントロール能力といった心理的形質、そして早期に競技に出会えるかといった環境的要因が必要となるでしょう。 また、研究者を例にとると、一般知能の高さやワーキングメモリの容量といった身体的形質が必要です。ちなみに知能の遺伝率は50%とされています。好奇心の強さなどの心理的形質も必要でしょうし、早期に適切な教育を受ける機会といった環境要因も重要です。 前述したように、遺伝と環境には交互作用があるため、社会性が高いほうが競技と早期に出会える可能性が高まるかもしれませんし、内向性が高いほうが深い思索を行う頻度が増えるかもしれません。 「努力すれば誰でも超一流になれる」わけでもなく、「才能(遺伝)ですべてが決まる」わけでもありません。身体的な形質だけでなく、心理的形質も重要であり、そこにも遺伝が関わっています。さらに環境も心理的形質によって変化します。そこには複雑な相互作用が存在していることが研究ベースでも明らかになっていることを知ることができ、大変勉強になりました。

2月 11, 2025 · 1 分 · 44smkn